まえむき。について

まえむき。について、ちょっとだけお話しさせてください。

1、全国の伝統野菜、固定種野菜を栽培しています。

ごく一般的なスーパーで売っているのは、F1種子と呼ばれるタネから栽培された野菜です。F1種子とは、例えば形の良いものと病気に強いもののような、異なる特性を持つ親を人為的に掛け合わせて作った種です。F1の種から育った野菜は、みんな同じような成育のしかたをし、同じような形になり、そして同じ時期に収穫できます。つまり、出荷しやすく、売りやすいので、現代最も多く栽培されている野菜です(遺伝子組換処理ではありませんよ)。多くの方の口に合うように一般にクセがなく、食べやすい味になるように交配されていることもあります。

ですが、『まえむき。』では全国各地の人々が、昔から守り、受け継ぎ、栽培してきた伝統野菜と呼ばれる野菜と、親から子・子から孫へと代々同じ形質(味や形)が受け継がれ固定された、固定種と呼ばれるタネからだけ、野菜を作っています(ちなみに伝統野菜も固定種に当たります)。

昔から受け継がれてきたタネは一粒一粒に個性があり、発芽の時期や形、生育のスピードがなかなかそろわず、早く育つものもあれば遅く育つものもあります。葉の形を見たり、成育の状況を見ながら、大きくなったものから収穫する必要があるため栽培にコツが必要だったりしますが、味に特長のある種類が多く、野菜それぞれが持つ独特の味わいが楽しめ、そしてなによりも野菜の味がとても濃く美味しいと思っています。実際に、私たちはこの伝統野菜を食べ、農業をやっていこうと思うようになりました。ちなみに野菜そのものにとてもいい味があるので、ちょっとした調理でもと〜っても美味しく変化してくれます。農業を始めてから、味と風味の濃い、いろいろな地方の伝統野菜が食べられるようになって、私たちの食卓はかなり豊かになりました(笑)。



現在、多くの人が考える「美味しい」は、甘くて柔らかいもの、生で食べられるもの、だと思います。ちなみに昔の大根なんて堅くて辛い。なぜかというと細胞のひとつ一つが緊密で均一だからです。F1種の大根だと、固定種で種まきから収穫まで3〜4ヶ月かかるところを2ヶ月で収穫してしまう。2ヶ月で成育するということは、その分ひとつひとつの細胞が水ぶくれのように大きくて柔らかく、その細胞を維持するために細胞壁が強くなって崩れるのを防ぐ。だからいまの大根を大根おろしすると水分でペチャペチャものが出てきて、おろし金の方には繊維が残って付いている。昔の大根をおろすと均質なものになります。いまの大根はすぐに煮えますが、昔の大根は時間をかけると辛みが甘味にかわる、味も全然違うのです。

正直に言うと、とっても甘いわけではないし、ものによっては若干エグ味があったりします。でも、野菜自体の味がとっても濃く、飲み込んだあとでも、しばらく間後味の余韻が続いていく、そんなうま味のある野菜だと思っています。

そして、いくら無農薬や有機肥料やその他の栽培方法で育てたとしても、味を決める要因の8割はタネだと思っています。だから、まえむき。では伝統野菜や固定種にこだわって野菜を育てています。




2、もちろん無農薬で。肥料もなるべく自然のものから、自分たちで作っています。

ご近所さんから野菜のおすそ分けをいただいたときに、「これは薬を使っていないから大丈夫よ。」と言われることがあります。冗談に聞こえるかもしれませんが、田舎ではよく聞く話だったりします。でもこれって結構怖い話ですよね。農家の方も危険を承知で農薬や除草剤を使っているということなのですから。

ただ、農薬や除草剤を使うことを肯定するわけではありませんが、これは仕方のないことだと思います。スーパーで売っているものって虫食いの跡のないキレイな野菜ばかり。そういう野菜じゃないとスーパーなどでは取り扱ってくれないので、キレイな野菜を作るためにどうしても薬を使うことになるのです。農家だって、野菜が売れないと生活ができなくなりますからね。あと、安価で大量に生産するためには、どうしても除草などの手間も時間もかかる作業を省く必要があるとか。そんな理由もあります。

でも、『まえむき。』では農薬も除草剤も使いません。 化学肥料はもちろん、鶏糞や牛糞などの動物性の有機肥料もなるべく使いたくないし、土壌にそれらの未熟な成分が残っていて、成長とともに野菜に吸収されるのも嫌だったので、10年以上耕作放棄された土地を探し、農地として開墾しています。



使わない理由は、、、ただ単に「使いたくないから」です。

農薬を使わないので、葉っぱが虫食いの穴だらけになり、「こんなの売れるか!!」なんて思って嫌になることもありますが、そもそも虫も食べられないようなものを食べることが如何なものかと思いますし、虫も含めていろんな生き物がいる畑のほうがなんか楽しいなと思うんです。農作業や収穫しているときに、チョウチョとかトンボが体のどこかにとまったりすると、なんだか癒されますよ(笑)。
本当は野菜と関係のない場所の管理のためには、除草剤などを撒いてもいいのかもしれませんが、それでも農薬も除草剤も使わなくてもいいかなぁと思います。正直なところ、近所の農家さんが農薬を撒くと、、、次の日には私たちの農地にごっそり虫たちが引越ししてくるので、、、使わないで欲しいなと思うときもあるのですが。。。

まぁ正直農薬というのは、結構デリケートな存在だなと思います。私の住む町でも、量の大小はあってもだいたいの農家さんが農薬も除草剤も使用しているからです。どんどん高齢の方が多くなってきているので、農薬や除草剤を使用しなければ体力的に本当に管理ができないといったケースが大半だと思います。いろいろな理由があると思いますが、それぞれの立場で、正しいと思って判断しているのでどちらでもいいのだと思います(無農薬で栽培するのも同じです)。まぁ、感覚としてはタバコみたいなものかなと思っています。自分は吸わないけど、友達がヘビースモーカーでも別に構いませんよね。

ちなみに、鶏糞などの有機肥料や、化学肥料をなるべく使いたくない理由は、単純にそのほうが美味しいのでは?と思うからです。農業のイロハを教えていただいた師匠などからは、鶏糞などの有機肥料を、「使わないと野菜が育たない!土地もどんどん痩せていくだけから、1㎡あたり、毎年2kgは入れろ!」何て言われるんですけどね。使い方の問題もあるのでしょうけど、動物の糞から作った肥料を使った野菜には、嫌なエグ味があるような気がするんです(ただの主観ですよ)。作った野菜は販売もしますが、もちろん自分たちも食べるので、、、どうせなら自分が美味しいと思うものを食べたいですからね。

さらにちなみに、このような栽培を行っている農家さんは有機農産物JAS規格は取得し、野菜に表記して販売していることが多いと思うのですが、私たちは取得しません。なぜかというと、、、JAS規格を取得するには結構な額のお金と手間がかかるんです。それを野菜の価格に上乗せするのはなぁ…なんて考えから取得しないことに決めました。でも、間違いなく無農薬・無化学肥料不使用で野菜を作っています。




3、「土」を大事にしています。

まえむき。で目指しているのは農薬はもちろん、肥料もなるべく使わない農業。でも、何を使わないとしても作物を育てるにあたって、絶対に欠かすことのできないのは土ではないかと思っています(とりあえず、水耕栽培とかはおいといてw)。 畑や水田は、悪くなってしまったから、新しいものに取り替えるというわけには、、、なかなかいきません。 この先、ずっとこの場所で作物を作り続けていくために、土にも健康な状態でいてもらうことが 一番大事だと考えています。

畑も人間の体と同じで、肥料分をあげすぎたら調子が悪くなってしまいますし、 反対に肥料分が足りなくても元気がなくなってしまいます。 また、同じ肥料分だけを土に入れ続けても、同じ作物を同じ場所で作り続けても、土壌のミネラルや微生物のバランスが偏ってしまいます。 そのため、土の状態には常に注意を払いながら、米ぬかを中心に作物残渣や草、緑肥など様々な有機物を取り込んだり、 微生物やミミズや他の虫たちの力を借りたり、乳酸菌や他の土壌菌などが働きやすいように炭や竹のチップを土に入れたり、いろんな作物を組み合わせて栽培することで土壌のミネラルバランスが偏らないようにするなど、土に負荷をかけず、 常に健康な状態でいてもらうことを心がけています(こういったことを「土作り」ではなく、土をどんどん育てていく「育土」というそうです)。

そうやって土の健康を保つことが、この先ずっと作物を育てていくことに繋がりますし、さらにはそうした環境で元気に育つことが、美味しい野菜を作る一番の方法なのだと思っています。




4、野菜は生き物。その個性や、季節にや天候による違いを楽しんで欲しいです。

実際に野菜を栽培するようになってつくづく思うのは、野菜は生き物なんだなということです。 生き物なので当然個性があります。栽培する前はスーパーで売られている野菜しか見たことがなかったので、なんとなく「野菜ってみんな同じ形に育っていくんだなぁ」なんて考えていたのですが、、、実際には、、、特に私たちが育てている野菜が固定種だからなのか、同じ種類でも、生ちょの早いものからのんびりしているもの、大きいものや小さいもの、ちょっと曲がっていたり太かったり細かったり、丸くなったりちょっと長くなったとり、面白いほどバラエティに富んだ形をしています。

形のおかしなものはやっぱり不味いのかな???なんて思って食べてみたのですが、料理するときにちょっと手間がかかるな、とは感じますが、極端に形のおかしいものや生育のおかしなもの以外は、特に味に違いはないと思いました(思いっきり主観ですよ)。それもそうですよね。だって同じ種から作られているんですから。最近は、野菜だって生き物なんだから、ちょっとぐらい個性があるほうが面白くていいじゃない!!なんて思っています。

他にも、当然のように季節によっても違います。たとえば万願寺とうがらし。辛くない種類の唐辛子なのですが、夏はすくすく育っているので瑞々しくてジューシー。秋はゆっくり生長するから果肉に厚みがあり、じっくり火を通して食べると柔らかく、優しい甘味としっかりしたうま味が感じられます。そして、いくら丁寧に育てていても、どんなにベテランの農家さんが育てたとしても、たとえば長雨がつづいた後はちょっと水っぽくなってしまい、いつものような美味しさは感じられません。野菜は生き物なのだから、当然時期や天候のタイミングで生育が変わってしまいます。できればみな様にも、こういったところから季節の変化や野菜の個性を感じてほしい、ブレを、楽しんでもらいたいと思っています。

万願寺とうがらしが肉厚になってきたら、「あぁ、今年の夏も終わりだな」と感じてもらいたいし、葉物野菜や根菜類が多くなってきたら冬が近いのかなと思って欲しいし、2月のダイコンにス(中身にすき間や穴が空いてスポンジ状になっている状態)が入っていたら冬が終わるサイン、「もうすぐ春が来るのね」ととらえてもらいたい。

もちろん、我慢して食べてくださいなどというつもりはありません。 スが入っていた際は、お手数ですがご連絡いただければもちろん交換させていただきます。 ただ、なるべく「雨が続いて水っぽくなってしまっているだろうから、まとめて廃棄しよう」とか「スが入っているかもしれないから、まとめてダイコンは廃棄しよう」とする代わりに、 野菜の種類や味の変化から、みな様にも季節の移り変わりや、天気などを感じていただきたいと思うのです。




5、料理することが楽しくなる。そんな野菜だと思います。

野菜が届いたら、まずはひと口、生のまま食べてみてください。じっくり噛んでみると、なんとも言えない野菜のうま味が口の中に広がると思います。それから、どんな風に料理してみようかゆっくりと考えてみてください。もちろん、生でもよし、さっと火を通してもじっくり火を通しても。野菜自体の味がしっかりしているから、どんな料理にしても美味しく変化してくれると思います。

他にも、友人を呼んでホームパーティをするときとか、夫婦の記念日のディナーを作るときとか、普段なら肉や魚が主役になるところを、たまには野菜が主役の料理にしてみるのはいかがですか?

なぜなら、まえむき。で栽培している野菜は、それぞれにストーリのある、ちょとひと味もふた味もある野菜ばかりだからです。みんなでどんな料理にするか考えながら、または出来上がった料理を囲みながら「この野菜はね…」なんて、これから食べる野菜にまつわるちょっとしたストーリーやうんちくなんかを話してみると、会話も広がり楽しいのではないかと思います。 もちろん、我が家でも毎日いろいろ試していて、日々、野菜料理のレシピが増えています。よかったら我が家で食べている野菜のレシピなんかも参考にしてみてくださいね(我が家のレシピはこちらをご覧ください)。